健全な植物は、土から水分・ミネラルを吸収し、光合成で食物を作り、その栄養を全身に運びます。花を咲かせ、果実・種子を作り、冬越しのための養分を貯蔵します。これらの機能が損なわれた状態が「病気」です。
カビ(糸状菌)・細菌・ウイルス・線虫など、病原体によって引き起こされる病気。感染した植物から健全な植物に広がる。
高温・低温・干ばつ・浸水・紫外線・塩害・重金属・栄養不足など、環境ストレスによる病気。他の植物には感染しない。
病気が発生するには、①病原体の存在、②感受性のある宿主植物、③環境条件(発病に適した気象等)の3つが同時に揃う必要があります。
このうちどれか1つでも取り除けば病気は起きません。これが防除の基本的な考え方です。
耐病性品種を使用する。病気に強い品種を選ぶことで宿主側の感受性をなくす。
農薬散布(殺菌剤)・温湯処理・太陽熱土壌消毒・UV処理・生物的防除など5つの方法。
ジャガイモはでんぷん20.6%・タンパク質2.1%・ビタミンC・B1・ミネラルを含む重要な食料です。カビ・細菌・ウイルス・線虫など多様な病原体が収量を脅かします。発病した植物はすぐに取り除き、深く埋めるか焼却することが重要です。
原因菌:Phytophthora infestans(フィトフトラ・インフェスタンス)
症状:葉の端や先に薄緑色の水っぽい斑点(2〜10mm)→茶色く枯れ→株全体が枯死。感染イモは赤褐色〜紫のシミ。
発生条件:最適温度18〜20°C、相対湿度90%以上。雨が続くと急速拡大。
詳細は第4章参照
原因菌:Alternaria solani(アルテルナリア・ソラニ)
症状:古い葉に暗茶色の丸〜楕円形の壊死斑点。斑点が合わさり葉が黄化・落葉。最適温度25〜30°C。
管理:疫病(晩腐病)と同じ殺菌剤が有効。暑い時期に多発。
原因菌:Rhizoctonia solani(リゾクトニア・ソラニ)
症状(2段階):①茎かび期:発芽後の成長点が地上に出る前に死亡。茎に茶色のかび症状。葉が紫色化。②黒かび期:イモ表面に濃茶〜黒色の固まり(菌核)がくっつく。
対策:健全な種イモの使用が最重要。
原因菌:Streptomyces属細菌
症状:イモ表面に丸く盛り上がったコルク状の斑点(5〜10mm)。乾燥した土で多発。
対策:pH5.0〜5.2の弱酸性土壌維持。輪作。石灰は使わない。発生率に応じた対策を。
症状:茎に縞模様の茶色い変色、葉がブロンズ色、イモが腐り悪臭。高温多雨時に多発。傷口からも感染。
対策:現時点で有効な対策法は確立されていない。健全種イモの使用と衛生管理が基本。
特徴:体節のない小さな生き物。メスが産卵後、死体が嚢(シスト)となり卵を10年以上守る。
症状:植物の成長が弱く、葉が黄色化。感染が続くと根が減り水分・栄養不足に。
対策:耐性品種の使用。感染畑の土を他へ持ち込まない。
伝染経路:アブラムシが感染雑草からウイルスを運ぶ。種イモからも感染。農具・切断ナイフでも広がる。
対策:無病種イモの使用。アブラムシの徹底管理。症状のある株はすぐ除去。日本では種芋生産畑は政府認定制度で管理。
疫病はサンクー地域で約15年間流行し、農家の証言では最大90%もの収量減少をもたらした最重要病害です。
・葉の縁や先端に薄緑色の水浸状斑点(2〜10mm)
・湿潤条件で急速拡大→葉全体が枯死
・葉裏に白いカビと胞子嚢が多数形成
・茎・葉柄に薄茶〜濃茶の病斑→株が倒れることも
・1週間以内に株全体が黒く枯死することも
・イモ表面に赤褐色〜紫色のシミ
・内部に向かって広がる変色
・硬く乾燥した感触
・二次細菌感染で軟腐病となり異臭
・感染種イモから翌年への感染源となる
最適温度18〜20°C。夜間10〜12°C、日中20〜25°Cの温度帯で胞子嚢を大量産生。相対湿度90%以上(葉に水滴・霜)の状態が続くと急速に拡大。雨が降ると感染が加速。葉が4〜8時間以上濡れていることが感染の条件。平均気温25°C超では発生が抑制される。
日本で使用できる主な殺菌剤と希釈倍率・効果持続期間の比較です。
効果持続期間が長い農薬は単価は高くても、散布回数が減るためトータルコストは安くなる場合が多い。散布回数を半分(週1→2週1)にすれば、燃料費・人件費も半分になります。
ただし、散布開始のタイミングが最重要。病気が出た後では遅く、早すぎると無駄になります。
農薬は高価で、散布のための燃料費・労務費もかかります。最適なタイミングで必要最低限の散布を行うことが、コスト削減と環境保全の両立につながります。そのために、毎日の気象データを記録して発生を予測することが不可欠です。
30年以上のデータを元に開発。畑の緯度経度と芽出し日を入力すると、①毎時の圃場湿度95%超の累積時間、②5日平均最低気温、③48時間降水量などから「危険日」を算出し、1週間前にメール通知。ただし、このシステムはネパールの発生パターンには直接適用できません。ネパールの気象・発生データの蓄積が必要です。
種イモは必ず認定された無病のものを使用。植え付け前に元気な株を選んで印をつけ、その株から種イモを取るのが理想。傷・腐れ・変色のある種イモは絶対に使用しないこと。
前作の腐ったジャガイモやトマト・ナスなどナス科作物の残渣を完全に取り除く。これらに病原菌が潜んでいます。
春ジャガイモは週1回、秋ジャガイモは2週間に1回、葉の裏まで丁寧に確認。症状発見後は速やかに農薬散布。
毎日の気温・降雨データを記録し、発病しやすい気象条件を予測して散布。葉裏までしっかり濡れるよう下から噴霧。マスク・手袋・長靴を着用すること。
灌漑は土壌水分をよく確認してから実施。過剰な水分は胞子を流し広げる原因に。点滴灌漑・畝間灌漑を活用し、葉が濡れないよう注意。
疫病にかかったジャガイモや茎葉は、圃場内に放置・堆肥化せず必ず焼却処分。次作への感染源を絶つ最も確実な方法。
秋ジャガイモ収穫後に堆肥として使う場合は完全に腐熟させてから使用。腐熟不十分だと次作の感染源になります。
気温 10〜25°C、湿度が高い日(曇り・雨・霜)が 2〜3日続いたら疫病発生の危険サインです!すぐに農薬散布を検討しましょう。
シャンカラプール農家グループ(サンクー)
シャンカラプール−8
Tel: 9841218969 / 9841619703
セニッド カトマンズ: 9851100714
監修:北海道立総合研究機構 道南農業試験場
池田幸子 博士(植物保護技術士)
協力:札幌農業開発研究グループ
JICAグラスルーツプログラム
2024年 最新改訂版